daniel-yangのブログ

メインブログ「受動態」(読書感想文ブログ)とは異なる内容を気まぐれで記します。

脳を活性化するために砂糖を!と言う件について。

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時々耳にする砂糖の宣伝文句。
「脳はエネルギーを沢山消費します。」
「脳が利用できるエネルギー源は、ブドウ糖だけです。」
「脳を活性化させるために、砂糖を摂りましょう。」
三段論法のようですが、
疑問が沸きました。

 

一つ
「脳はエネルギーを沢山消費します。」
です。

 

たしかに脳はエネルギーを沢山消費するようですが、
「しかし、どう考えても、筋肉の方がエネルギー消費するんじゃねぇの?」
と言う疑問です。

 

二つめは、脳がエネルギーを沢山必要とするのだとしても、
そのほとんどは、
「頭を使ったなぁ。」
と言うような思考のためのものではなくて、
生命維持のための指令を出すために使っているもので、
難しい問題を解かなくても(ぼんやりしていても)ほとんど同じように脳はエネルギーを消費するのではないか。
と言うことです。

 

三つめは、
脳に必要なエネルギー源がブドウ糖のみ。と言うことです。
簡単に検索したところ、
「脂質も、タンパク質もエネルギーとして使うことが出来るが、脳はブドウ糖のみ」
と言う説明ばかりです。
「脂質」「タンパク質」と言うならば、もう一つのエネルギー源は「ブドウ糖」ではなく「糖質」です。ちょっと恣意的な(ブドウ糖アピールちっくな)表現に感じられました。警戒感がわきます。
中学校の理科で習った記憶をひもときます。糖質は、炭水化物全般を指します。単糖類まで分解して消化吸収されます。
単糖類は「ブドウ糖グルコース)」以外にも「果糖(フルクトース)」「脳糖(ガラクトース)」など沢山あります。
「本当に、ブドウ糖だけなの?」
が、疑問です。

 

四つめは、
脳がブドウ糖しか利用できないとして、
砂糖はブドウ糖と果糖が一つずつ結合した二糖類で、
「ショ糖(スクロース)」
です。
たしかに、砂糖を摂取すれば、ブドウ糖が吸収できます。しかしながら、同じ量の果糖(フルクトース)も吸収されます。脳がブドウ糖しか利用できないとすれば、ブドウ糖と同じ量で吸収されるフルクトースは脳では消費されず、体に蓄積されてしまうのでは?
「脳に栄養を!」
と言うならば、砂糖は不適切のような気がします。
砂糖よりも、分解すると全部がブドウ糖になるデンプン(つまり、ご飯)の方が適切では無いですか?

 

ーーーー

 

それでは、一つ一つ調べていきます。
目次
1. 脳のエネルギー消費は、本当に他のどの臓器よりも多いのか?
2. 脳のエネルギー消費に占める思考による消費の割合は?
3. 脳のエネルギー源は、本当にブドウ糖だけなのか?
4. ブドウ糖源として、砂糖は適切か?

 

ーーーーー

 

1. 脳のエネルギー消費は、本当に他の、どの臓器よりも多いのか?

(5)運動の基礎科学
で引用している論文
によると、
安静時でも
1. 筋肉
2. 脳
3. 肝臓
の順番です。
やはり、筋肉が最もエネルギーを消費するようです。
でも、筋肉を除けば、
脳は、臓器の中では一番エネルギーを喰らう。
です。
「脳は、エネルギーを沢山使うようだ」
と、納得しました。

 

次!

 

2. 脳のエネルギー消費にしめる、思考による消費の割合は?

5%程度らしいですぞ。

 

インターネットの検索だけで、簡単に答えが見つかるとは期待してませんでした。
が、しかし。
なんとなく、信用できそうなページが見つかりました。

 

名古屋大学の大学院、環境学研究科の心理学講座、田邊宏樹准教授のページ
脳から学ぶ
です。
「特定の課題を行うのに必要な脳のエネルギーは、何もしていないときの脳活動に使われているエネルギーのたった5%です。」
と言うことです。

 

つまり、脳をフル活動させる課題で頭を悩ませているときでさえ、脳はその20倍のエネルギーを生命維持などに使っており(※)もちろん「安静時に必要なエネルギー」は、課題に取り組むのをやめても、ずっと必要。と言うわけです。
(※)引用した名古屋大学の先生は頭を休ませているときの脳の活動を研究されています。それは、僕が記した「生命維持」以外の活動です。一所懸命考えている時でさえ、5%しか増えない脳の省エネルギーの秘訣。休んでいるときに活動しているのは「生命維持に必要なのだ。」ではなく、一所懸命考えるときに必要な何かを蓄えているのではないか?と、研究されているようです。
いずれにしろ、
二番目の疑問
「頭を使うには、脳にエネルギーが必要。」
と言うのは、ちょっと難があるように思いました。

 

次!

 

3. 脳のエネルギー源は、本当にブドウ糖だけなのか?

 

まず、調べなくてもわかることは、
「脳細胞にはミトコンドリアがある。」
です。
赤血球や、目の角膜、水晶体にはミトコンドリアが無いので、直接のエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)の生成を細胞質での解糖系に頼ります。よって、ブドウ糖グルコースや果糖(フルクトース)(※)など、解糖系で利用できる糖が必要です。
(※)フルクトースは、フルクトースリン酸の状態で、グルコースリン酸異性化反応により、グルコースと同じように、解糖系でエネルギー源であるATPの製造に利用されます。と、言うよりは、解糖系の一部で、グルコースは必ずグルコースリン酸→フルクトースリン酸の過程を経ます。

 

しかし、脳細胞には、ミトコンドリアがあります。ですので、脳細胞は、脂質(を消化したもの)やタンパク質(を消化したアミノ酸もエネルギー源として利用できるはずです。

 

脳に「ブドウ糖が必要」と言うのは、見当違いではないようですが、
正確には「必要」と言うべきではなく、
「効率が良い」と言うのが適切なようです。

 

以下は、wikipediaの「グルコーストランスポーター - Wikipedia」の項を参照して述べます。

 

哺乳類の細胞には、グルコーストランスポーターがあります。グルコーストランスポーターはタンパク質の一種です。グルコーストランスポーターの役割は、細胞の外から細胞の内側に糖を取り込む事です。細胞膜を通過させるのがひと仕事らしいです。
グルコーストランスポーターには二種類あります。
一つは、能動輸送で細胞内に糖を取り込むナトリウム-グルコース共輸送体タンパク質(sodium-dependent glucose transporter:SGLT)です。SGLTは小腸や腎臓にあります。
もう一つは、受動輸送で細胞内に糖取り込む狭義のグルコーストランスポーターglucose transporter:GLUTです。
GLUTは13種類見つかっています。しかしながら、見つかっている13種類のGLUTのうち、9種類は働きを調べて解ったものではありません。ヒトゲノムの解析から見つかったものです。つまり、働きは不明で、存在がわかっただけです。実際のブドウ糖輸送は4種類(GLUT1~4)の働きによります。

 

血液脳関門にあるのがGLUT1
GLUT2は、主に消化器(吸収する方)にあり、
GLUT3は、脳細胞を含む神経細胞など
GLUT4は、骨格筋、心筋など
にあるそうです。

 

骨格筋や心筋にあるGLUT4は、インスリンにより活性化する=インスリンが無いと働かないのに対して、
血液脳関門にあるGLUT1、脳細胞にあるGLUT3は、インスリンが無くても、ブドウ糖を細胞内に取り込む事が出来ます。

 

と、言うわけで、脳へのエネルギー源供給の関門となる血液脳関門グルコースは効率よく通過するそうです。
ただし、脂質も肝臓でアセチルCoAからケトン体に変換されて、脳関門を通過し、脳細胞のミトコンドリアでエネルギー源として使われます。
この記述は、やはりwikipediaの「血液脳関門 - Wikipedia」の項を参考にしました。

 

まとめると、
「脳のエネルギー源は、ブドウ糖に限られるものではない。ただし、ブドウ糖は効率よく脳に供給されるエネルギー源である。」
と言うことになりましょうか。

 

草食動物は、食物繊維セルロースブドウ糖が沢山つながった炭水化物)を盲腸で分解してブドウ糖を得ることができます。
人間は盲腸の機能を失っています。ブドウ糖まで分解出来る炭水化物と言えば、穀物に含まれるデンプンしか考えられません。
でも、考えてみれば、原始的な生活をしていた頃の僕たちのご先祖様のお食事は、タンパク質か、脂質が主な栄養源で、炭水化物を直接摂取することなんてほとんど無かったわけです。
また、今でも、寒い国の人が、脂質をたっぷり含んだ動物の肉を栄養源にしていたり、南方の島国の人たちが、魚を主食にしている事を考えれば、
「脳内ではブドウ糖しかエネルギーになりません。」
が真実ならば、彼らが生きている理由(又は我々の祖先が命をつないできた理由)が説明出来ないのではないか。と疑問に思う次第です。
僕たち人類は、ブドウ糖を含む炭水化物をほとんど摂取しなくても、健康に生きることができるはずです。

 

ちなみに、南の島の人たちに近年肥満が問題になっているのは、伝統的に魚のタンパク質や脂質だけを栄養源としていたところに、豊富な炭水化物食を始めたために、カロリー摂取過多となっている事が原因との見方が出来るそうです。

 

次!

 

4. ブドウ糖源として、砂糖は適切か?

 

既に考える必要が無くなったような気がしますが、
ブドウ糖を消化吸収するためには、効率の良い方法と言える。
・ ただし、ブドウ糖と同じ量の果糖も吸収するので、ブドウ糖のみの摂取を目的とした場合)カロリー摂取過多となるであろう。
と言えると思います。

 

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まとめ

 

次の三点をまとめとします。

 

1. 「受験勉強などで頭をつかう人には、砂糖がお勧め」
と言うのは過ちである。
特に、
「脳はブドウ糖しかエネルギー源に出来ないから、砂糖を!」
とか、
と誘う広告はインチキか、最近の研究成果をお勉強していない不真面目なものです。
注意しましょう。

 

2. いわゆる「頭を使う」ために必要なエネルギーは、ぼんやりしているときに必要なエネルギーと大して変わりがない。

 

3. 砂糖で栄養を摂ると、効率よくブドウ糖(および果糖)が摂取できるけれど、急激な血糖値の増加があり、身体に悪い。ブドウ糖が欲しければ、ご飯を食べよう。

 

まとめのまとめ
からだに必要な栄養は、バランスの良い食事を心がけるべきである。

 

日経ウーマンオンラインが紹介している
大塚製薬 佐賀栄養製品研究所の実験結果
などが、妥当なところなのではないかと思います。

 

僕は、朝食を摂りませんが。

 

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「脳」「ブドウ糖」で検索すると、
「脳を活性化するためにはブドウ糖を!」
と言うような内容の文章が沢山引っかかります。
その中には、大手の食品メーカーもいくつかあり、
ダイエットを指南する立派なサイトもたくさんあり、

 

この日記の結論は、これらに喧嘩を売っているような気がして、多少気後れするのですが、そこは一つ「個人の見解です。」と言う事で、ご了承願いたいと思います。

 

遅くなりましたので、これにて日記をアップロードします。
それでは、みなさん、おやすみなさい。