このブログに検索で訪れる方のキーワードで一番多いのは、
「サリン」
「合成」
です(笑)
昨年九月に書いたエントリー
が、未だによく引っかかるようです。
「一応、おれ有機物の合成の専門家だし、サリンの合成ぐらい知っておいても損はないな。」
とネット検索をしました。
オウム裁判で検察が述べた合成反応式が解りました。
これを紹介している人が、
「合成しないでね。」
などと記している所から、あたかも簡単に合成できるイメージがあるようでした。
「ホント? そんなに簡単に合成できるの?」
と疑問に思ったので、
具体的に考えてみたものです。
結論から言うと、
五段階反応の最初の一段階目の合成反応でさえも、
少なくとも
・ 複雑な猛毒の化合物を日常的に化学合成している建物(三階建てのビルディングのイメージ)
を
・ そこで働く人全員含めて、
丸ごと買ってこなければ無理。
でした。
検索して僕のエントリーを読んだ方に、これが伝われば良いな。
と、思う一方、
エントリーのタイトルだけを読んで、
「あら、やだ。この人、サリン合成出来るのね?」
と危険人物として認識されたら嫌だな。
と思う次第です。
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そこで、本日は、専門家がいる分野について、
専門家でないひとが抱くイメージについて考察してみたいと思います。
先ず、化学について。
僕は一応化学の専門家です。有機物の合成が専門です。
(学部卒ですが)一応化学系の大学の学科を卒業した工学士で、
(短い期間ですが)新規物質の合成を職務にしていたこともあります。
僕の本名(もちろんDaniel Yangと言うのは世を忍ぶ仮のハンドル・ネームです)をご存じの方は、これで特許検索をすると、お恥ずかしながら、いくつかの新規物質の特許申請をしていることがわかると思います。
閑話休題。
先ずは、中学生の時
・ 水素と酸素が化学反応すると、水が出来ることを習いました。
化学反応式は、
2H2+O2→2H2O
です。
僕は、
「じゃぁ、水素を持ってきて、酸素がある空気中で反応させれば水が出来るんだな。」
と理解しました。
後年、たしかにこの理解は間違いでは無いことを知りました。
加えて、実際のこの化学反応は爆発であり、
爆発の結果出来た水は、空気中に溶けて水が合成できたかどうかも解らない。
と言う中学生の時には想像も出来ない現実を知りました。
次は、高校生の時
化学反応式は、
2Ph(-COOH)-OH+CH3-CO-O-CO-CH3→2Ph(-COOH)-O-CO-CH3+H2O
か?(^_^;)ていうか、これ、ウェブでテキストで書くの、無理があるね(^_^;)
感想は、
「めんどくさい。」
「無駄ばっかり。」
でした。
薬局に行けば、胃に優しい成分(アルミナ=Al2O3)も配合されたバファリンが、千円以下で手にはいるのに、
化学の授業で僕が作ったアセチルサリチル酸は、バファリンの小箱一箱分に遙かに及ばない量で、しかも、粉。未反応の原料=サリチル酸と無水酢酸もたぶん混ざっている。つまり、薬として飲むことは出来ない(もちろん、飲みませんよ)代物で、
授業が終わると、全部回収されて、捨てられていました。
次は、大学の卒業研究
ピリジンの誘導体を合成しました。
化学反応式は、
pyridine)-4-COOH-qあwせdrftgyふじこlp;@:「」!!(ノ´□`)ノ
書けません。
高校生の時に、
ベンゼンなどの芳香族に置換反応させると、
オルト-パラ配向性の置換基と、
メタ配向性の置換基がある
と習うと思うけれど、メタ配向性の置換基をオルト位に置換する合成をしました。
感想は、
「タイヘン。」
「くじけそう。」
でした。
いろんな反応(熱を加えたり、攪拌したり、圧力を掛けたり、塩を足しながら、気体の塩化水素を吹き込んだり)をしたので、合成職人としての修行にはなりましたが。
次は、就職して
何を合成したかは伏せますm(v_v)m
分子量が1,000近いモノマーです。
これを業務目標に据えたときには、
「ねぇ、これってほぼ高分子じゃない?」
「頑張りますけれど、出来なくても評価してもらえる?」
と、あらかじめ泣きを入れました。(^_^;)
実際には、ライバルの企業が既に着手しており、僕が合成して「やったー\(^O^)/」と喜んだ翌月に学会で発表され、「一足遅かったか。」と言う結果でしたが、
感想は、
「皿回しか?」
でした。
企業でやる事ですので、一人で出来る限りのことをやります。
例えば、三種類の合成方法を考えたら、
・ 一種類めの仕込みを終え、加熱攪拌を始めたら、
・ 二種類めの仕込みをし、これの加熱攪拌を始めたら、一種類目を精製装置に放り込み、
・ 三種類めの仕込みをする。これの加熱攪拌を始めたら、二種類目を精製装置に放り込み、一種類目を精製装置から取り出す。
・ 一種類めの様子を観察して、
・ 四種類めのレシピを考える。
これ、やってたときは、仕事中はほとんど機械のように動いてました。
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長くなりましたので、続きは後日に記します。