ポピュラーミュージックの歌詞で日本語を覚えるのは、今も昔も変わらないようです。
僕が大学生のころに流行った今井美樹の彼女とTIP ON DUO
秋元康による歌詞の歌い出しが
「風の噂で」
です。
当時、一緒に聴いていた人が
「この言い回しは『風の便りが届いた』と『噂が流れてきた』のミクスチャーよね。」
とコメントしました。
僕は彼女のコメントで初めて「風の便り」と言う慣用句を初めて知り
「なるほど、誤った用語法を用いて、話題にしようと言う秋元康の意図だな。」
と納得したものでした。
と、遠い昔の記憶を思い出したのは、今マイ・ブームであるゲスの乙女。の
「餅ガール」
で同じ言い回しがあったので。
1:02からのサビで「ナイチンゲールが恋に落ちた、って風の噂流れた。」
と歌っています。
正しくは「風の便り届いた。」または、単に「噂流れた。」です。
ですが、あえて「風の噂流れた。」と歌うところが味噌でしょう。
今の若い人も、
「本当は、「風の便り届いた」だぜ。」
と友人に自慢げに話し、
日本語のボキャブラリーを増やすのだろうな。
と年寄りじみた感想をもちました。
小説などの本格的な文学でも、敢えて学校で教えられるような日本語の文章表現から逸脱した文章表現を目にします。
では、無理難題を言って、求婚者を却けるかぐや姫に対し、振られた男が「悪女!」と捨て台詞を吐く場面があります。
古典で「悪女」と言えば、容姿が優れない女性を差すことは、星新一も、読者も知っていて、なおかつ、現代語の「悪女」=性格が悪い女と言う意味を受け入れているわけです。
以前、日記
に書いた、安部公房の「洪水」では、一箇所だけ、文体を変えて、読者の視線を移す切っ掛けにしています。
このようなアクセントは、
・ 著者が意図してやって、
・ 読者が「あえて、やってるな。」と気付いて
成立する読者へのサービス=「俺はわかってるぜ。」と言う共感を与えるサービスですが、読者が気がつかなかった場合、台無しです。
間違えだと知らず、お手本にして、自分が書く文章に流用するとか、
素人が書いた文章の場合、単なる間違いとして認識される可能性があります。
と、言えども、僕も気がつかずに、流用して変な表現をしているのだろうな。
と思うと冷や汗が出るものですが、
瓜双子[うりふたご](「瓜二つ」と「そっくりな双子」を誤って合わせた)
雪なだれ[ゆきなだれ](なだれは「雪崩」と書くことを知らず、雪を重ねた)
とか、間違っているけれど、まあ良いじゃん。
と、すでに、スラングとして積極的に用いられる単語もあることを思えば、そんな重箱をつつくようなことはすまい。
と思う秋の夜長でした。
久しく何も書かずにいたので、思いついたことを書き連ねてみました。