daniel-yangのブログ

メインブログ「受動態」(読書感想文ブログ)とは異なる内容を気まぐれで記します。

姫野カオルコ「部長と池袋」(光文社文庫2015/1/20)を読みました。

マニア垂涎の一冊。
今まで単行本などに未収録だった作品を一堂に集めた文庫オリジナル。初期の(処女三部作(※)以外の)作品に通じる味わいがあり、昔からの(処女三部作から入ったファン以外の)ファンにとっては「あぁ、俺、こういう作品が好きでファンになったんだよな。」と再認識する形で楽しめました。
「池袋」ってヘンな地名だよね。
と言う部長に突っ込む立場ではなく、突っ込まれる立場として読むのが、姫野カオルコマニアの読書です。

自分が感じたことを正直に述べて笑われる事があります。笑う人が
「普通は、そうじゃないだろ。」
と考え無しに突っ込んだ際、僕はカウンターとして
「俺は自分が感じたことを述べたんだ。それを否定はできないだろ。」
と心の中でつぶやきます。
そんな経験を持つ貴女、貴兄の心の友としての姫野カオルコ作品です。

レアと言う意味では「蕎麦屋の恋」
蕎麦屋の恋 (角川文庫)

蕎麦屋の恋 (角川文庫)

 
文庫化
時に収録されず、長らく入手困難だった短編
イーハトーブの小迪」が「秘密とアッコとおそ松くん」として、
「天国に一番近いグリーン」が「ゴルフと整形」として、
スワンの涙」が「パソコンと恋」として、
「色つきの男でいてくれよ」が「書評と忸怩」として、
収録されました。
「ゴルフと整形」に至っては、ファンには印象深いあの作品からスピンオフで登場する人物がお楽しみなグレードアップになっています。
この本を読んで、最近の(直木賞を受賞するような)作品との違いを認識しました。
と、言うわけで、直木賞受賞を切っ掛けに「昭和の犬」
昭和の犬 (幻冬舎文庫)

昭和の犬 (幻冬舎文庫)

 
を読んだ人に
「次に姫野カオルコ作品を読むとしたら何が良い?」
と聞かれた場合には、本書(部長と池袋)は、あまりオススメしません。
「昭和の犬」がファースト姫野カオルコ作品だった方に、「次」をオススメするなら(恋愛小説ですが)
「ツ、イ、ラ、ク」
ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)

ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)

 
です。
読み応え有り。
面白いです。
すっごく面白いです。
何回でも読んじゃいます。
ちなみに「ツ、イ、ラ、ク」も直木賞候補でした。

 

(※)姫野カオルコの処女三部作
ドールハウス (角川文庫)

ドールハウス (角川文庫)

 
 ↑ Dollのスペルが間違っていますが、今買う分は直っていると思います。
喪失記 (角川文庫)

喪失記 (角川文庫)

 
不倫(レンタル) (角川文庫)

不倫(レンタル) (角川文庫)

 
処女三部作は、姫野カオルコの初期作品です。同時期に出版されたエンターテインメント指向でサービス満点の他の作品とは趣が異なります。
抑圧的な家庭で育てられた、二十代後半の女性が主人公の三部作。浮かれた景気の良い時代に、周囲と同化できず、ちゃらちゃら遊ぶことがない静かな生活を送る女性。
「結婚していないのだから処女で当たり前だろう。」と言う女性を代弁する、強く印象に残る作品群です。