daniel-yangのブログ

メインブログ「受動態」(読書感想文ブログ)とは異なる内容を気まぐれで記します。

「偏差値」と「メルトダウン」は似ている。

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レッテル張りに使用され、無意味な非難、排除の対象となった言葉として、
「偏差値」
は似ていると思う。
 
「偏差値」
の場合、上に引用した記事のように「ペーパーテスト」または、「ランキング」と言うべきだと思う。
の場合、「チャイナシンドローム」と言うべきだと思う。
 
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では、説明します。
偏差値は良くない」と誰かが言ったとき、おそらくそれは、
「ペーパーテスト偏重の入試は良くない」
または、
進学先を選ぶときに、「ランキング」だけを気にするのは良くない。
と言うことを言いたいのだと思います。
これを手っ取り早く
「偏差値は良くない」
と言うのだと思います。
 
実は、偏差値は悪くありません。
専門家でない僕が解説するのは少々危険ですが、敢えて危険を冒して説明します。
「偏差値」は統計数学の専門用語です。
テストの点数のように、沢山の数字がある時に、それが平均点からどの程度離れていて、どの程度平均点以上なのか、平均点以下なのかを比較可能にする計算結果です。
例えば、100点満点のテストの平均点が50点だった場合、平均点50点をとった人の成績は、偏差値「50」と表現できます。
また1000点満点のテストの平均点が650点だった場合、平均点650点をとった人の成績は、偏差値「50」と表現できます。
満点も、平均点も異なるテストの成績を比較することができるのが「偏差値」です。
 
そこで、社会科の倫理・社会、政治・経済、日本史、世界史、地理A、地理B
理科の物理I、化学I、生物I
のように選択出来る場合、
本来は、点数を偏差値に換算するのが公平で公正な評価になるのですが、
「偏差値は良くない」
ので、正解の点数をそのまま比較して、平均点が大きく異なる場合に問題となります。
また、本来は得意科目や、専門として進みたい科目を選ぶべきなのに「化学の方が平均点が高いから。」と物理を選択せずに化学を選択する場合などがあります。
(現時点でのセンター試験では、得点調整と言うルールがあり、問題の難易度が大きく異なる場合に、偏差値とは別の計算式で調整するそうですが、実際に運用される事は希だそうです。)
 
「偏差値は良くない」
の誤解が招いた、大きな弊害ではないでしょうか。
 
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2011年の原発事故の際耳にした「メルトダウンが起きている。大変だ。」と言うのは、実際のところ「大事故だ。大変だ。」と言う意味だと思う。
メルトダウンの言葉の意味は、溶けて(メルト)落ちる(ダウン)です。
しかし、原発事故で「メルトダウン」と言う場合、従来は次のような事態を指していたと思います。
事故が起きた原子力発電設備の核燃料が、核反応で熱を発する。
自ら発した熱で、その容器を溶かす。
溶けた容器から、核燃料が床にこぼれ落ちる。
 
床にこぼれ落ちても、核反応が止まらず、熱を発し続ける。
床を溶かす。
溶けた床を突き破り(溶けているので、破ると言うよりは、滑り出すのだが)地面に落ちる。
 
地面に落ちても、核反応が止まらず、熱を発し続ける。
地面を溶かす。
落ち続ける核燃料と、核反応熱で熱せられて溶けた地面はどちらも液体であり、混ざらない。(または混ざるまで時間が掛かる。)
すると、重たいものが下に行く法則(対流)により、核燃料は、核反応熱を発しながら、周囲の地面を溶かし、自らは、地球の中心へと向かって落ちていきます。
 
地球の中心まで落ちるのか?と言えば、さにあらず。
井戸水などをくみ取っている地下水まで落ちると、
核反応熱で、地下水を熱します。
熱せられた地下水は、100℃を超えると沸騰します。
水が沸騰すると、体積は、一千倍以上に膨張します。
1molの気体は22.4リットル。=22.4×1,000cc
1molの水は18グラム。=18cc
22.4×1,000÷18=1,244
 これだけの体積変化は爆発です。
 
大爆発が起こるので、ここで核燃料が飛び散り、落下は終わります。
 
すなわち、メルトダウンとは、核燃料が、熱を発しながら、容器、床、地面を次々に溶かしながら落ちて行き、地下水脈に達した所で大爆発を起こすことを指しています。
 だから、「メルトダウンが起きている!」と言うと大変なのです。
が、2011年の原発事故の際には、一部燃料が溶けて、容器からこぼれ落ちたものの、容器からこぼれ落ちた段階で留まり、床や、地質を溶かすには至らなかったようです。
しかし、一応、溶けて(メルト)容器からこぼれ落ちた(ダウン)なので、メルトダウンと言えば、メルトダウンです。
 
ここまでをまとめると、
メルトダウン(一般的なイメージ)は、大爆発による、核反応物質の広範囲への飛散です。
メルトダウン(言葉の意味だけで)は、核燃料が溶けて容器から落ちることです。 
 
つまり、「メルトダウン」といった場合、言葉から認識される状態が一つではありません。
ですので、事故の状況を説明する際に、説明をする専門家は、「メルトダウン」と言う言葉を使いません。
 
ところが、記者会見の場で「メルトダウンなのか、どうなのか?」と厳しく問いつめる記者がいました。
言葉の意味から言えば「メルトダウン」と言っても良いので、
僕が思うに、説明を聞いた記者が書きたければ「メルトダウンに至っている」と記事を書けば良いのです。
ですが、記者が「メルトダウン」と表現すると、
核燃料が床にこぼれ落ちても核反応を続け、地面を溶かしてなお、核反応を続け、地下水脈に達する危険がある。
と、誤解が危惧されます。
記者が誤解を危惧すれば、記事で「メルトダウン」と書かなければ良いと思います。
 
つまり、「メルトダウン」と記事に記すかどうかは、記者が判断するべき事だったと思います。
ですが、記者は自分で判断せず、専門家に「メルトダウンですか?」と尋ねました。
当然専門家は明確に答えません。
そこで、記者は、専門家を非難する記事を書きました。
メルトダウンなのに、メルトダウンと言わない!」
と。
 
本来、事故の状況把握をして、世に知らしめるのが報道の役割なのに、言葉の定義から、専門家を非難する事に時間を費やした場面でした。
 
ちなみに、原子力発電所の事故で、核燃料が核反応したまま、その熱で、容器、床、地面を溶かして落ちていく事態を指す言葉として、アメリカのスリーマイル島原発事故の際には、(その燃料が、地球内部を通過して、ついには、地球の反対側=中国まで達するぞ!と言う揶揄を含めて)「チャイナ・シンドローム」と言われました。
と、言うわけで、「メルトダウン」と言って、事故の深刻さを伝えたい場合、言葉が広義である「メルトダウン」と言うよりは、「チャイナ・シンドロームだ!」と言うのがよろしいかと思います。
2011年の事故では、「チャイナ・シンドローム」には至らなかった事は、よくご存じのことだと思います。
 
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そろそろ「偏差値は良くない」と言う表現は「ペーパーテストの結果重視は良くない」とか、「ランキングだけで大学を選ぶべきではない」と改めるべきだと思う。
少なくとも、先ず僕は、
今後「偏差値は良くない」と言う人を見かけたら、
「レッテル張りで自分の主張を通そうとする、インチキ」
として信用しないことにします。
 
そろそろ「メルトダウンが起きていた!」と言う表現は、やめませんか。
すくなくとも、先ず僕は、
2011年の原発事故の状態として「メルトダウンが起きていた!」と言う人を見かけたら、
「レッテル張りで、事故の状況を不正確に表現する、インチキ」
として信用しないことにします。
 
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言葉が、ある特定の印象を持ち、広く人口に膾炙したときから、その言葉で何かを判断することが出来なくなる。と言うことを肝に銘じた、早春の夜更けでございました。
 
それでは、みなさん、オヤスミナサイ。